JCPのあるべき姿

今回のDI標準化戦争?が勃発したことでJCPが正常化される、
OSS主導への回帰である、JavaEEの終焉であるや、JCPが機能不全に
陥っているのはSunの責任でありOracleが買収した事により
JCPが正常化される等の論調の文章を見かけるが、
これらの文章から読み取れる書き手の考えは根本的に間違っています。


JCPの機能不全の責任は多少Sunにあるかもしれませんが、責任の多くは
Javaのコミュニティにあります。


JCPは仕様議論の場、提出された仕様草案に対して議論が行われます、
裏を返せば、提出された仕様草案の範囲内でのみ議論が行われます、
提出された仕様草案の範囲外にあることは議論されません。


今までJCPに提出された仕様案の殆ど全てがSunに拠る(あるいはSunの
関与した)提出であり、Sun以外の組織から提出された(Sunの関与しない)
仕様案は数えるほどしかありません。
だから、JCP上では多くのグループでSunの提出した(あるいは関与した)
仕様の範囲内で議論が行われきました。


特定の組織から提出された仕様に対して異見があるなら、対抗する
仕様を提出するのが本来コミュニティのあるべき姿です。


仕様草案づくりに掛かる手間や仕様提出時の煩雑な手続き、JCP上で
議論を闘わせる事を嫌ってSun以外のほとんど誰も今までJCP
仕様案を提出してきませんでした。


JavaEEにしてもそう、誰もSunの提出した(あるいは関与した)草案に
対抗する仕様案を提出してこなかったので、Sunの提出した(あるいは
関与した)仕様案の範囲内のみで議論が行われてきました。


Sunの提出した(あるいは関与した)仕様案に対抗する仕様が提出され
てこなかった以上、JavaEEがSunの提出した(あるいは関与した)仕様以上
の何かになるはずはありません。


JCP上でコミュニティが議論を戦わせてこなかったのだから、JCP
機能不全に陥って当たり前です。


今回、Sun以外の組織からSunの提出した(あるいは関与した)仕様に
対抗する仕様が提出されたことはJCP正常化の第一歩になるかも
しれません。


Sun以外の組織からSunの提出した(あるいは関与した)仕様に
対抗する仕様が提出されたことは過去にもあります、
JSR 277: JavaTM Module System に対抗して提出された?
JSR 291: Dynamic Component Support for JavaSE が有名、
片手?で数えることができるほどしかありませんが...。


JCPを正常化する道はJCP上でコミュニティが議論を戦わせることに
よってのみ切り拓かれるのだと思います。


JCPに文句があっても外野で傍観者(を気取る)あるいはギャラリー(観衆)
として騒いでいるだけでは(他力本願では)何も変えられません。


議論がクローズされていて外野で行われている議論が反映
されないのは、何もJCPに限ったことではなく、標準化団体全て
がそうです。
外野で行われている議論まで考慮しだすと収拾がつかなくなり標準化に
掛かる時間は今まで以上に長くなります。外野で行われている議論を
考慮するように標準化団体に要求するのは無理があります。


SunがJCPの運営を主導する事によって生じている問題もありますが、
企業としての思惑があったにしてもSunのJavaに対する功績は
(多大であり)評価されて然るべきものです、コミュニティはそれを
踏まえた上で今後JCPがどのように運営されていくのがベストなのか
議論する必要があると思います。


推敲中?


[蛇足]
そういえば少なくともJBossはSunと対話してSunと共同でHibernate
叩き台にEJB3仕様をJCPに提出したんだった。


Guice・Spring陣営は外野で議論していても埒があかないから、JCP上で
議論を闘わせる道を選んだようにみえます。


EJB3登場前夜もJavaEEの終焉?うんたらかんたらと外野で騒いでいた人間が
いたような気もする、同じことを繰り返して飽きないのかと思う。


今回のDI標準化戦争?が勃発したことはOSS主導への回帰に繋がるとかいう
論調の文章を書いている人間の頭の中には「企業は不純、OSS開発団体は高潔・
清廉」とかいう間違った考えがあるように思える。


企業のみが利害の衝突等を抱えているわけではなく、OSS開発団体も企業から
の影響を受けている、OSS開発団体に対して人材を送り込んでいる企業の思惑
によりその企業の声を代弁しているケースや企業間の利害の衝突により代理戦争
をしているケース等が該当する。


JCPが企業主導ではなくOSS開発団体主導であったとしても、JCPのかわりにOSS
開発団体主導の別組織を作るにしても、OSS開発団体が企業からの影響を受ける
(企業の思惑が絡んでくる)以上、現状と何ら変わらない。


現状の団体が気に入らないから別の団体を作るという発想で思い出すことがある。
国連が気に入らないから国連にかわる団体を作るつもりだとの前アメリカ大統領の
一時期の発言?、結局その話は何の進展もなく立ち消えした(、国連への牽制
だったのだろう)。